恵比寿ガーデンプレイス (1994)
設計:久米設計
* 商業デザイン的な密度が高い大規模複合施設。一つの独立した世界を感じさせる * 思い々々に建つポストモダン的ビルのはざまで、居場所が感じられなくなる時もあるような、そんな「都市」
恵比寿ガーデンプレイスの住所を、 このページ下の囲いでは渋谷区恵比寿4-20と書いたが実際には目黒区三田1-4,13 と二股をかけている。 もともと何の敷地だったか知らないが、区の境にあって主要幹線道路からも少し離れ、 線路脇だし、かなり独立性が強い場所となっている。 ここに来るには、ご存じのようにJR恵比寿駅から動く歩道に乗る。 だから駅からそんなに遠く離れた感じがしない。 しかし動く歩道とはまたランニングコストがかかることよ‥。 ガーデンプレイス内部もインテリアがかなり凝っていて、ビルともども金をかけている (しかも照明の電気代たるや凄いと思う)。 昨今の不況の中で、ここは先行投資やランニングコストが回収できていない。 今となってはいつ潰れるか分からない。
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恵比寿ガーデンプレイスは、なかなか多様な複合施設である。 各種テナント商店・飲食店は言うにおよばず、ホテル、博物館、ホール、オフィス、マンション、百貨店、 映画館、そして恵比寿麦酒記念館というものまである。 敷地計画的には、とにかくまず敷地の南の方に大きな道があって敷地を二分している。 この道は線路の東側から山手線を越えて橋をわたり、敷地の北東までカーブして伸びている。 商業施設は主にこの道の北側に整備されている。 JR恵比寿駅からの入口を要として、 浮遊客がいかに便利に買い物したり映画を見たり食べたりできるか、 浮遊客を呼び込む施設が「シナジー」を起こすように近づけ合っている。 オフィスもそこにあって、通勤と買い物に便利な環境を提供している。 この部分の地下道やホールなどの商業的インテリアの質はハンパではなく、 浮遊客の滞留する商業空間を演出し切っている(但し個性的ではない)。 道の南側にはホテル、マンション、ツタヤなど多少遠くても利用者が通ってくれる施設が配置されている。
さて、客を引き留めておくには単にテナントを集めてもダメで、 客の潜在意識に働きかける強烈なシンボル空間とでも呼ぶべきものが必要となる。 それが「センター広場」である。 クイーンズスクエア横浜 で述べたように、現代商業空間ではテーマを持つか或いは人が行き交う囲われた空間を持つ場合が多く、 これは一種の大衆的自己確認装置である。 しかしガーデンプレイスはあまりに大きいので、 それに見合う囲われた吹き抜け空間を作る事は不可能(?)あるいは得策でないようだ。 何よりもセンター広場は、その名が示すとおり「中心」を指し示す為にあるように思える。 どこを歩いていても、ここが中心、原点として認識を秩序づける。
私はセンター広場をみると、ムラに対して神社が持つような、そういう「中心性」を連想する。 センター広場の軸線の行き着くところに何があるとお思いですか?。 軸線の到達場所というのは、神社で言うと御神体の鏡などがおいてある所だ。 日本文化の場合、神社そのものは空虚だし、神社の御神体もまた空虚である。 センター広場のかなめ、空虚な中心を引き受けているのは、何とタイユバン (フランスの有名レストランによるワイン屋)である。 しかもスゴいシャトー的なハリボテ。 これが何を意味するのか、ガーデンプレイスの計画担当者が何を考えたのか、 私にはまだ計りかねる。
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いずれにせよ、全体の雰囲気としては、ビルが商業的ポストモダンな感じを持ち、 ガーデンプレイス一角だけが独立して別世界のような感じを出している。 このポストモダン的雰囲気が、ディズニーランドと同様に囲われた場を効果的に作り出しており、 それが上に述べた大衆的自己確認装置になっているとも言える。 各ビルはそういう共通雰囲気の範囲内でかなり自由に思い々々に作られており、 それは仮設的なパビリオンを連想させなくもない。 結局、ここは機能に幅のある複合施設なのだけれど。徹底して商業的な読みによって作られてる。 うんと金をかけているが、それはただ一つ、集客力を向上させる為である (豪華に作って客を呼ぶという、その根本戦略がこの不況に合わなかったので、それでいま苦労している)。
私はここでこれまでガーデンプレイスを一つの商業施設として分析してきた。 商業施設としてはなかなか興味あるものであったけど、 しかしそもそもここは「商業施設」だろうか?。 本来、劇場・ホール、博物館などの構成は、 商業的な読みではなく、もっと文化的視野に基づいて作られるべきである。 繁華街やオフィスだって、儲け第一主義<だけ>で作られて良いとは思わない。 これは一つの都市計画なのである。 この場所は「街」であるべきなのに「ディズニーランド」でしかない。 しかもマンションがあるから、ここは「住環境」でもあるのだ。 ガーデンプレイスのどこが「住環境」だろうか。 思い々々に建つポストモダン的ビルのはざまで、私には居場所が感じられなくなる。
都市をつくる事を、儲かる/儲からないで計画される話にしてしまって良いのだろうか。 それは環境的な意味だけではない。昨今のように不況で立ちゆかなくなる場合もある。 東京都は「民間活力」に信頼を寄せすぎているのだ。 そのクセ(!)は今でも治らず「都市再生特別地区」なんて事をやっているが、 またぞろいたたまれない「都市」を作り出しているらしい。 しかも今回は、オフィス床面積の爆発を全く憂慮しなかった。 ちょっと、東京って、変だなぁ‥
掲載誌: 新9501 所在地: 東京都渋谷区恵比寿4-20 行き方: JR恵比寿駅から動く歩道に乗って直行する ここでの分類: 現代、商業建築 訪問年月日: 03/03/1 参考: その他情報: http://www.gardenplace.co.jp/
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