旧第一生命館 (1938)
設計:渡辺仁、松本興作
* 列柱が特徴的なオフィスビル。モダンでシンプル、それでいて威厳もある * GHQが接収し本部を置いた
旧第一生命館は、今ではDNタワー21という名前だそうだ。 これは、旧第一生命館とその裏にある農林中央金庫をまたいで、 高層の増築棟がケヴィン・ローチ+清水建設により建てらた後の名称である (新9601に掲載だから1995年竣工だろう)。 旧第一生命館(1938、昭和13年)は、渡辺仁と第一生命の松本興作の共作であり、 太平洋大戦後、GHQがヘッドクォーターを置いた事でもよく知られる。 列柱がジャイアントオーダーを連想させ、 モダンで垢抜けたシンプルさを持ちながらも威厳と記念碑性を感じさせる。 この記念碑的ないでたちが、写真を見るとGHQに実にお似合いだった。 だから長谷川堯がこれを「神殿建築」と呼ぶわけである。
こういうモダン列柱は、例えば 国立国会図書館関西館 の北にあるATR研究所でも見たことがあるが、あれは近作だからポストモダン的に見えた。 旧第一生命館はモダニズムでもなくて、やっぱりモダンだという変な(?)位置づけになる。 大阪ガスビル (1933)、 住友ビルディング (1926) など、この頃の有名オフィスビルは、 モダンなんだけどモダニズムといいきれない (尤も、このすぐ近くの 明治生命館 が1934年(昭和9年)竣工で、これは完璧な様式建築である。 さらに、住友ビルディングは何とDOCOMOMO指定ではある。つまりモダニズムってわけ)。
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大阪ガスビルも住友ビルディングも旧第一生命館も、当時の古典様式やモダニズムと 一線を画して距離をとっている。拒絶ではなく「距離」である。 これは恐らく、当時のオフィスビルというビルディングタイプの置かれた状況が絡んでいるのだろう。 ここで驚くのは、渡辺仁は 東京帝室博物館 を1937年に竣工させている事だ。 これは1930年代の「日本趣味を基調とする」有名なコンペによるもので、 渡辺の設計は和風の屋根をいだき、帝冠様式の代表例とされている。 和風屋根でもモダン列柱でも、更にはルネサンス様式でも、 渡辺はためらわず挑戦したし破綻も来さなかった。
掲載誌: 新3811 所在地: 東京都千代田区有楽町1-13 行き方: 皇居のお堀を廻る日比谷通りと晴海通りの交差点の一筋北の角。JR有楽町駅のすぐ西 ここでの分類: 戦前近代オフィス 訪問年月日: 03/03/1 参考: 『現代建築の軌跡』新建築1995年12月臨時増刊、新建築社 その他情報: 軌95
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