住友ビルディング (1926)
設計:長谷部鋭吉、竹腰健造


モダニズムと様式を交えた近代オフィスビル
外観は抑制的だがインテリアは古典的で豪華



この建物は住友が建てたビルの中で最重要と目され、何とDOCOMOMO選定作品でもある。 窓のシンプルさがモダニズムだと言えば言えるのかもしれないが、 まぁ石の質感がよく出たオフィスビルだ。 外観は質素で僅かに入口にオーダーが立っている程度なのだが、 よく見ると石(トラバーチン)の質感が贅沢である。 中にはいるといかにも豪華そうである。  



江戸の町人は派手な服装を禁じられたので裏地に金をかけ、それが「粋」と呼ばれたそうだが、 このビルもそういう「粋」みたいなものかも知れない。 当時の銀行建築はギリシア・ローマ的古典様式を全面的に採用するのがふつうだったから、 そういう意味ではこのビルは斬新だったろう。 このビルであと言っておくべき事は、もともと7階建てで計画されていたという事だ。 1923年の関東大震災の影響で5階に変更した。現6階は後の増築である。 設計は1922年の時点でいちおう出来ていたという。  



 
   
 



  このビルの外観で一番特徴的なのは、そっけない四角い穴のような窓である。 この意匠はどこから来たか。 確かにアドルフ・ロースはロースハウス(12)で四角いそっけない窓を試した。 しかしコルビュジェは1917年にシュウォブ邸を作り、 1922年にやっとモダニズムの実作を作っている。 つまりこのビルが設計された1922年には、モダニズム的な動きはごく僅かで、 それが直ちにこのビルの外観に影響を与えたとは思いにくい。 このビルの設計は長谷部鋭吉と竹腰健造によるが、 中心となったのは長谷部で、竹腰は英語が堪能だから買い付けに奔走したそうだ。 やがてこの二人は独立し、それが今の日建設計の前身となるのだが、 作風としてモダンな感じと古典様式の残り香のようなもののミックスを作り続けているという (例えば東京の住友ビルディング、大阪株式取引所)。



  長谷部はモダンな感じの中にも、どこか古典への視線が常にある人なのだと思う。 この四角い窓は見込みが非常に深い。 モダニズムが入った村野藤吾の森五ビル(31頃)は、窓の見込みが浅い事で知られている。 住友ビルディングの見込みの深い窓は、石の質感もあるし、 私にはモダニズム的というより中世ヨーロッパの城塞のような感じがした。 さて、肝心の内部だが、見てない。 ここは三井住友銀行の営業所リストに入っていない。 つまり一般客が入る場所ではなく公開していないのである。残念。





掲載誌:新2701
所在地:大阪府大阪市中央区北浜4-6-5
行き方:御堂筋と四つ橋筋の間、土佐堀川の南岸から中之島を向いて建っている
ここでの分類:戦前近代オフィス、モダニズム
訪問年月日:03/01/25
参考:『現代建築の軌跡』新建築1995年12月臨時増刊、新建築社,『建築MAP大阪/神戸』TOTO出版、1999
その他情報:軌33/M阪45、DOCOMOMO選定作品




tate_aji




2003 Copyright. All rights reserved トップ