大阪倶楽部 (1924)
設計:安井武雄
* テラコッタや煉瓦の積み方に凝っていて、形態も独特
大阪倶楽部の設計者である安井武雄は、 大阪ガスビル (33)でよく知られている。 しかしその9年前に竣工したこの建物は、同じ設計者とはとても思えない位違っている。 まず全体の形が「何風」とか「何様式」と言い切れない独自のものである。 まぁ要するに色んな要素が入り込んでいる、ということだ。 正面に回るとテラコッタの紋様が目に付く。 独立柱が立っていてエキゾチックな雰囲気を醸す。 テラコッタはどこの国風というわけではないが土着的なものを感じさせる。 窓の造作は、様式建築にときおり混ざるエキゾチックなディテールを思わせる。 新建築社刊『現代建築の軌跡』によれば 「和洋東西の様式が混合した饒舌なデザイン」と評していた。 日本でこれだけテラコッタに凝った(シャレ!)建物は珍しいだろう。
安井は何がしたかったのだろうか。 この作品は安井が満州から帰国して最初に作ったものと言われている。 満州や東洋の何かをこの建物に託したかったのかもしれない。 もうひとつ私が連想したのは、ドイツ表現主義である。 フリッツ・ヘーガーのチリハウスが1924年竣工つまり丁度この頃で、 煉瓦の積み方に凝って独創的な感じを出している。 確かに大阪倶楽部のテラコッタや煉瓦は土着なものを連想させるのに、 表現主義では何らかの土着要素を連想させる事は殆どないし、 様式建築の表現からも切れている。
従ってこの作品を表現主義と呼ぶことは出来ないだろう。 それにも拘わらず、 同じ時代に煉瓦造で独創的な建物を作ろうとした点では表現主義と一致している。 安井は1923年に泉佐野に谷口房蔵邸を建てているが、 アールヌーヴォーやグラスゴー派を思わせるインテリアが使用されているという。 アールヌーヴォー、グラスゴー派、土着的表現、‥‥。 この当時の安井武雄は、いわば五感をくすぐる装飾・ディテールに魅了されていたのではないか。 その安井はこののち装飾と決別する。そした建てた代表作が 大阪ガスビル (33)というわけだ。
掲載誌: 所在地: 大阪府大阪市中央区今橋4-4-11 行き方: 御堂筋と土佐堀通りの交点から2ブロック西、2ブロック南 ここでの分類: 戦前近代、戦前様式 訪問年月日: 03/01/25 参考: 『現代建築の軌跡』新建築1995年12月臨時増刊、新建築社,『建築MAP大阪/神戸』TOTO出版、1999 その他情報: M阪45
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