大阪府立中之島図書館 (1904(明治37年))
設計:野口孫市
* 明治37年竣工で重文。古典様式の精華
この図書館は住友財閥の寄付で建てられた。設計は住友の建築部に居た野口孫市が担当し、 明治37年に竣工した。大正11年には日高胖が左右のウイングを増築させている。 一見して威風堂々とした古典様式(古代ギリシア神殿のような姿)が見る者に迫ってくる。 しかし場所が悪い。 前庭が狭く、これでは向かいにある大阪市役所のビルのお尻を向いて建っているようなものだ。 もっと充分に引きを取らないと、 このスケール感のあるファサードの醸し出す空間性が半分くらい死んでしまっている。
まァそれにしても立派である。 このシュンメトリア(プロポーション)から、 西洋の古典建築(古代ギリシア神殿)を野口が深く身につけていた、といえるだろう。 装飾にも幻想的な深みがあるし、正面扉の丸アーチも映えている。 建物の構成としては、階段室を持つドームが真ん中にあって、四方に閲覧室や書庫を配している。 この配置は厳格で、パラディオ的である。
中に入るとドームがまた良い。天窓のあるドームの内部は、ディテールも充実している。 ドーム周りの階段と二階は木製であるが、彫刻されていて立派である。 昔は正面入口のエントランス空間を経て、すぐにこのドームに入ったのであった。 その時感じられる空間性が、この建物の非常に重要な部分だった筈だ。 今では正面が閉ざされ脇から入るから、それは体験できない。 この建物は重要文化財にふさわしい。だってこんな建物は今作ろうと思ったって絶対無理であろう。
まぁしかし、日本でこういういでたちを見ると、ヨーロッパ的なものをイメージするだけでなく、 明治政府の持ついかめしさとか古さが連想されるから面白いというか不思議だ。 結局のところ、上でシュンメトリアを褒めたが実はオーダーが太くて多少鈍重さがあるのである。 だから、もとの西欧的なものではなく明治政府とかその時代の雰囲気が先に感じられてしまう。 これは2004年に私がローマ旅行から帰ってからの印象である。
ちなみにこの図書館の左右両翼は大正11年の増築である。 設計は日高胖で、長谷部鋭吉が強力した。
掲載誌: 所在地: 大阪府大阪市北区中之島1-2-10 行き方: 中之島と御堂筋の交点の東側にある市役所の裏 ここでの分類: 戦前様式 訪問年月日: 03/01/25|04/04/01 参考: 『建築MAP大阪/神戸』TOTO出版、1999 その他情報: M阪46
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