大原美術館分館 (@@@)
設計:浦辺設計、浦辺鎮太郎
* 大原美術館の庭の雰囲気に溶け込んだ分館。和風や倉敷を連想させるディテール
大原美術館分館は、浦辺設計の前身である「倉敷レイヨン営繕部」が作った。 建物は低く横に広がっている。建物の後ろ側は倉敷美観地区(保存地区)の境界で、 正面には大原美術館内部の、日本庭園と和風の建物の作り出す景色が広がっている。 正面の和風の景色は壊してはいけないし、裏面に広がる市街とは縁を切りたい。 で、建物は壁のように横に広がる低い建物となった。 この場所にもし背の高い壁がめぐらせてあったら興ざめであったろう。 ここでは建物がその代わりをして雰囲気を壊していない。 そして和風につなげる為に、倉敷とか和風を何となく連想させるデザインをしている。 これ以上背が高いと目障りであろうが、この建物はとても控えめに見える。 あいまいなイメージをまとう事により、自分の気配を上手に消している。 結果として美術館の庭園に広がる雰囲気をしっかり守っている。
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内部も「倉敷」とか「和風」を連想させる和とも洋ともつかないディテールが多く使われている。 通路やロビーを見る限りでは、いい雰囲気を醸し出している。 しかし、展示室には少し疑問が残った。 雰囲気(あるいは感覚的インパクト。これを<強度>と呼ぶ)を発するのは展示物だけで充分なのに、 部屋のディテールが勝手に或るデザイン方向性を持ってしまっている。 これは鑑賞する側からすれば雑音あるいは余計な<強度>である。 展示物を引き立てる為のディテールこそ必要であり、それが別の主張をしてしまってはいけない。 ディテール過剰という意味では、これは同じ浦辺設計による芸文館にも通じる特徴といえるかもしれない。 後から作られた現代美術の展示室(正面右の地下)の内部は、さすがにもっとシンプルであったが、 代わりに展示パネル等がくたびれた感じがして、それがやっぱり一種の「雑音」であった。 大原美術館本館にも増築部分があって、そこの展示室にも疑問を感じた。 展示室の天井の造作などに目障りなディテールがあるのだ。 狙いとしては全体の雰囲気と連続性を持たせたかったのだろうけど、 結果として、展示室はあまり上手にできていない気がした。
掲載誌: 新6106 所在地: 岡山県倉敷市中央1-1-15 行き方: 倉敷美観地区の中の西側 ここでの分類: 戦後近代 訪問年月日: 02/10/3 参考: 『現代建築の軌跡』新建築1995年12月臨時増刊、新建築社 その他情報: @@@
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