広島世界平和記念聖堂 (1954)
設計:村野藤吾


村野藤吾が反核の願いを込めて作った緊張感のあるモダニズム的建築



思ったより建て込んだ中にあった。 最初に建物の東側に回り、裏というかアプス(内陣)の側から見たら、 村野らしい曲線をもった上部が見えた。窓も曲線が多い。 南のエリザベト音楽大学側から見ると、構内の庭と教会の側面が良い関係を作っているように見えた。 最後に正面、すなわち西側から見た。正面の大きな十字架は、饒舌すぎず控え目すぎず、 見る私達に迫ってくる。 コンクリートレンガは、物資のない時代に作っただけに却って迫力のある表情を産んでいる。 村野らしい曲線のディテールが小さくちりばめられているが、全体の構成はシンプルで禁欲的である。 反核の願いを込めて設計されたこの教会には独特の緊張感が感じられる。 個性的であると同時に全体が調和して感じられたので感心した。 ちなみに入口が3つ位あって、その左のやつは金属の枠で取り付けた普通のドアであった。その 金属枠が何ともモダンに見えて良かった。  



 
   
 



  中は清楚だが、ちょっとシンプルだなぁと感じた。それは外側のコンクリートレンガのような テクスチャが暗くて掴めないせいでもあるが、もう一つにはヨーロッパに行ってカトリック教会 の内部というのはゴチャゴチャしたものだ、という先入観が私にあった為だと思う。



  この建物はコンペで一等が出ずに、審査員だった村野が自ら無償で設計したという。 松隈洋は次のように書いている。 「30万本に及ぶコンクリートレンガの生み出したファサードは、時間の経過と共に成熟し、 希有な風格と匿名性を獲得し始めている。そこには、近代建築の持つジレンマ、 《美しく古びゆくさま》を刻むことの難しさ、に対する批評性までも感じ取ることができると思う。 (『建築とまちづくり』1996年)」。 禁欲的な構成はモダニズムの系譜であるが、同時に村野の個性的ディテールが出ている。 この建物の雰囲気は、見ておいて良かったと思った。





掲載誌:新5504
所在地:広島県広島市中区幟町4-29
行き方:@@@@@@@@@@@
ここでの分類:戦後近代、モダニズム
訪問年月日:02/10/2
参考:「建築とまちづくり」建築とまちづくり編集委員会,『現代建築の軌跡』新建築1995年12月臨時増刊、新建築社
その他情報: 




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